日本漢方と中医学を比べてみて、大きく異なる点として、中医学では「五臓六腑」に代表される内臓論を重視している点にあります。そこで、今回は五臓の肝・心・脾・肺・腎について連載していきたいと思います。(初回は肝臓)
現代医学の肝臓の解説
肝臓は人間の体の中で最も大きな臓器で約1.2㌔~1.5㌔ほどの重さがあります。肝細胞の集合体で、その数は実に2500億以上と言われています。その肝臓の働きは… ①エネルギーの貯蔵 ②血液の貯蔵 ③解毒 ④胆汁の分泌 ⑤物質の合成などがあります。
中医学における肝の役割
肝の働きでは、全身への気の運行、精神・情緒の安定、血の貯蔵、筋・目の機能維持などがあり、現代医学とも若干、類似する点もありますが、その作用や性質は以下の通りと考えております。
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①肝は血を蔵す
常に多量の血液が貯蔵されており、栄養を運び、老廃物を回収・処理して、きれいな血液の状態にしています。
②疏泄(そせつ)を主る
新陳代謝や解毒のことで、あらゆる生理機能を規則正しく進めるという意味です。
③肝は筋腱を支配し爪に反映す
肝に貯えられた血液の作用で筋肉を養い、爪もその一部と考えております。
④肝は目に開窮(かいきゅう)す
目は最も鋭敏な感覚器官であるため、肝から栄養を供給されていると考えております。
⑤肝は謀慮(ぼうりょ)を主る
じっくり考えること。肝がしっかりしていると思考が集中できるとされます。
⑥肝は条達(じょうたつ)を喜ぶ
抑圧のない状態を好み、制約を嫌うとされます。
⑦肝は風(ふう)を主る
内風といい、引きつけやけいれんのことです。どちらも肝が関係していることが多いと考えられています。
⑧涙は肝の液
人体には五液という五つの分泌液があります。涙は肝の液と言われています。
⑨青色は肝に属す
顔の色が青い、白目が青い、血管が青く目立つなどは肝の異常と関係していることがあります。
⑩酸味は肝に入る
五味から酸は肝に作用します。但し、微量だと助け、過量だと障害になるため、適量を…
⑪からだの両側は肝に属す
下腹部の左右外側、脇腹の左右、乳房の左右外側などは肝に属し影響を受けます。
肝の病理
肝気鬱結 気滞血於 肝脾不和 肝気犯胃 肝陽化風 肝風内動 肝血虚 肝腎陰虚 寒滞肝脈などが主なものです。
肝臓のことで気になる方は、お気軽にご相談ください。